熊本市に本社を置く住宅メーカー『シアーズホーム』が住宅ローン申し込みで情報改ざん

「数字は嘘をつかない」と言う。だが、数字を書く人間が嘘をつけば話は別である。

熊本市に本社を置く住宅メーカー、シアーズホームで、顧客の住宅ローン申し込みをめぐる不正が明らかになった。二〇二一年以降、複数の社員が源泉徴収票や勤務先を改ざんし、ローンの対象外である自動車ローンの借り換え資金を上乗せしていた。申し込み先は十四の金融機関、件数は実行済みを含めて百二十七件に上る。発覚のきっかけは、金融機関からの用途の問い合わせだったという。

家を建てる。多くの人にとって、人生で最大の買い物である。数十年に及ぶ返済を背負う覚悟で、夢の設計図に判を押す。その横で、担当者が書類の数字を静かに書き換えていたとしたらどうだろう。顧客のためを装いながら、実のところは自らの契約のために。

調査委員会は、背景に顧客獲得とインセンティブへのプレッシャーがあり、「獲得のためなら不適切な手段も許される」という認識が社内にあったと指摘した。ここに問題の核心がある。ノルマや報奨そのものが悪なのではない。ただ、数字が人を励ます段階を過ぎ、人を追い詰め、やがて麻痺させる。一人が越えた一線は、隣の席の者には「皆がやっていること」に見え、上司の黙認がそれを「ルール」に変える。懲戒の対象が四十六人に及んだことが、個人の逸脱でなく組織の病であったことを物語る。

被害を受けるのは誰か。まず顧客である。意図せず、あるいは「通してあげるから」と言われて、実態と異なる申告の当事者にされた人もいよう。返済が行き詰まれば、傷つくのは家庭である。金融機関の信頼も、住宅ローンという仕組みそのものへの信頼も損なわれる。地域で長く家を建ててきた会社ならなおさら、失うものは大きい。

会社は処分を行い、「信頼回復に努める」と述べた。だが、信頼は言葉で戻らない。処分は出発点にすぎず、問われるのは評価制度の見直しや、契約を取った者と書類を確認する者を分ける仕組みの整備、そして「数字より誠実」を現場で貫く経営の姿勢である。

「家」は、人が安心して眠るための場所だ。その土台となる契約に偽りがあってはならない。売り上げの数字を見る目の半分でいい、客の暮らしを見る目に回せなかったのか。基礎の手抜きは地震で露見するが、書類の手抜きは、返済の途中で静かに牙をむく。そのことを、すべての営業の現場が思い起こしてほしい。

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