鹿島や清水建設など9社、環境価値を取引する「クリーン燃料証書制度」の導入に向けて環境負荷が少ない次世代燃料を現場で活用する実証に参加

重機が唸りを上げる工事現場の朝。その排気に、かつて天ぷらを揚げた油の面影が混じっている。そんな光景が、早ければ数年のうちに珍しくなくなるのかもしれない。

鹿島や清水建設など9社が、経済産業省の「クリーン燃料証書制度」の実証に加わる。ENEOSが輸入する水素化植物油、いわゆるHVOを、環境価値の証書とともにゼネコンなどが現場で使う。HVOは廃食油などを水素化処理してつくるバイオ燃料である。台所や食堂で役目を終えた油が、巨大なショベルカーの血となって甦る。資源の循環とは、こういうことだろう。

もっとも、この制度の眼目は油そのものにはない。「環境価値」を燃料から切り離し、証書として売り買いできるようにする点にある。燃料は燃料として消費され、その低炭素という性質だけが別の企業に渡る。電力の世界で再生可能エネルギーの証書が広まったのと同じ発想だ。専用の設備を整えなくても脱炭素に取り組める。利点は確かに大きい。

ただ、目に見えぬものを取引するには、見える以上の信用が要る。その環境価値は本当に実在するのか。同じ価値が二重に売られてはいないか。認証と移転の仕組みが緩ければ、証書は「免罪符」の別名になりかねない。炭素を減らした気分だけが売れ残る、そんな皮肉な結末は避けたい。今回の実証が、制度の有効性とともに運用上の課題を洗い出すことを目的としているのは、その意味で理にかなっている。

ふと思う。人は昔から、目に見えない価値に値札をつけてきた。貨幣がそうであり、約束手形がそうだった。紙切れ一枚が信じられたのは、背後に誰かが責任を負う仕組みがあったからだ。環境価値もまた、信用という土台の上にしか立たない。

制度の開始は2027年度の予定という。建設現場は脱炭素の難所の一つで、電動化が難しい重機も多い。そこに現実的な一歩を探る参加企業の姿勢は評価したい。一方で、輸入に頼る燃料で国内の価値を回すことの是非や、廃食油の調達が将来どこまで続くのかといった問いも、いずれ向き合わねばなるまい。

証書は、使う人の覚悟を映す鏡でもある。買えば済む、と思った時点で価値は目減りする。排出を減らす本気があってこそ、紙の上の数字は大気の中の現実に変わる。

油に姿を変えた過去の食卓が、これからの街をつくる。その循環が真に回り出すかどうかは、油よりもむしろ、制度への信頼の質にかかっている。

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