熊本県庁金庫から約70万円を窃盗した30歳職員を懲戒免職
公務員が市民の財産を守るべき立場にありながら、自らの「懐」に手を突っ込む――。これほど分かりやすく、そして情けない裏切りがあろうか。熊本県庁の金庫から、30歳の若手職員が現金約70万円を盗み出し、懲戒免職となった。理由を聞いて呆れ果てる。「借金の返済に窮し、引き落とし日が迫っていた」という。身勝手な懐事情に駆られた軽挙妄動は、およそ税を預かる公僕の身処しとは言えまい。
盗まれたのは、県民が汗水流して納めた大切な県税などの収納金である。納税は国民の義務であり、そこには行政への信託が込められている。その重みを忘れたかのような「発作的」な悪手は、個人の倫理観の欠如にとどまらず、県庁という組織のタガの緩みを痛烈に告発している。
事件を受けて県は、金庫の鍵と暗証番号の管理者を分離するなど管理体制を改めたという。だが、問われているのは施錠の技術やルールの細部だけではないはずだ。どれほど厳重な鍵を掛けようとも、庁内に「出来心」を許す不真面目な空気が漂っていては、第二の不正を防ぐことはできまい。
「引き落とし日」の恐怖に負けた青年主事は、自らの職も、将来も、そして何より地方自治の根幹である「信用」という最大の財産を失った。市民から預かった金銭を横領・窃盗する行為は、行政の存在理由そのものを揺るがす罪悪である。信頼を失うのは一瞬であり、それを取り戻すには長い月日を要する。熊本県庁がなすべきは、単なる管理体制の見直しにとどまらず、組織全体の道徳観を根本から叩き直すことである。

