民法911条に定める「共同相続人間の担保責任」とは何か

分け合えば、その先にも共に負うものがある。それが遺産相続というドラマの裏に潜む、法律の冷徹で温かな眼差しである。

民法第911条。条文を開けば「各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う」とある。難解な法律用語を解きほぐせば、こうだ。「みんなで分けた遺産に後から欠陥や問題が見つかったら、それぞれの取り分に応じて責任(穴埋め)を分担しましょう」という共同関係のルールである。

第911条(共同相続人間の担保責任)
 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。

身近な事例を思い浮かべてみたい。父親が亡くなり、長男と次男が遺産を折半することになった。遺産は実家の土地建物と預貯金の2つ。長男が評価額2,000万円の土地建物を引き取り、次男が2,000万円の預貯金を相続して穏やかに話がまとまったとする。

ところが、相続から数か月後、実家で重大なシロアリ被害や地中障害物、あるいは雨漏りが発見された。修繕には400万円を要するという。長男にしてみれば「2,000万円の価値があると思って引き取ったのに、実質1,600万円の価値しかなかった」ことになる。ここで911条が登場する。長男は次男に対し、「不具合の分(400万円)について、相続分の割合(半分ずつ=200万円)だけ負担してほしい」と請求できるのだ。これが同条の定める「瑕疵(契約不適合)担保責任」である。

本条の背後には、相続人間の「平等の理念」が流れている。遺産分割協議は、あたかも相続人間で権利を売り買い・交換し合ったような性質(有償契約に類似する性質)を持つ。だからこそ、売買契約の売主が不適合な商品を売った際に責任を負うのと同様、引き取った遺産の欠陥に対しても互いに補償し合うのが公平というものだ。

実務論点として重要なのは、2020年施行の改正民法による「契約不適合責任」への整理である。相続人が追及できる手段には、補修を求める追完請求、修繕費等の代金減額請求、さらには損害賠償請求や遺産分割の解除検討まで及ぶ。ただし、引き取った遺産に欠陥があることを「最初から知っていた(悪意)」場合や、特約で責任を免除した場合はこの限りでない。

また、担保責任の追及には時効がある点も実務上の要注意事項だ。欠陥を知った時から1年以内に通知しなければ、権利は消滅してしまう。

相続は、遺産を分け合って「終わり」ではない。分かち合ったからこそ、その後のリスクも分かち合う。911条は、血を分けた者同士が遺産を巡って不公平に泣くことがないよう支える、公平という名の安全網なのである。

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