熊本県八代市の新庁舎建設を巡る汚職事件・・・行政のチェック機能がいかに容易に麻痺するか

清廉であるべき地方自治の舞台で、あまりにも不透明な「官製」の筋書きが露わになった。熊本県八代市の新庁舎建設を巡る汚職事件。かつて副市長を務めた人物が百条委員会で放った証言は、行政のチェック機能がいかに容易に麻痺するかを雄弁に物語っている。

事件の核心は、入札の「評価基準」が特定の共同企業体(JV)に有利になるよう歪められた疑いだ。驚くべきは、その基準案が起訴された市議から副市長へ、そして首長の「了解」を経て担当部署へと、まるでバトンを繋ぐように流れていた事実である。捜査関係者によれば、その原案は落札した大手ゼネコン側が自ら作成したものだったという。

「市長了解済みだと言われ安心した」。証言に漂うのは、あまりに安易な事なかれ主義と、権力への盲従である。市議が特定の入札基準を持ち込むという異常事態に直面しながら、元副市長はそこに疑問を抱かなかった。それどころか、長年県職員を勤め上げた行政のプロであり、総合評価審査会長という重責にありながら、首長の一言を免罪符にして手続きを検収した。組織の体をなしていないと言わざるを得ない。

新庁舎は本来、市民の信託を受け、地域の未来を象徴する「公」の器であるはずだ。しかし、そこで繰り広げられていたのは、一部の政治家と業者が利益を融通し合い、行政がそれを追認する「私」の政治であった。これでは、庁舎の土台が築かれる前に、市民の行政に対する信頼という最も重要な土台が崩壊してしまう。

委員会は今後、当時の市長の証言を求める構えだ。闇に葬られた絵図の全貌を解明せねば、八代の空に新しく聳える庁舎は、不名誉な疑惑の記念碑となってしまう。徹底的な検証と猛省を強く求めたい。

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