台風30号が九州へ接近 大雨など十分注意
天は時に、容赦という言葉を忘れるらしい。季節外れの大型で非常に強い台風三十号が、先島諸島付近を北上している。このまま予報通りの路を進めば、九州南部に上陸し、熊本県内にも強い風雨をもたらす見込みだ。
ただでさえ脅威となる大雨や強風だが、今回の接近は被災地にあまりにも重い試練を突きつけている。七月の地震で甚大な被害を受けた地域では、大地そのものが傷を負ったままだ。震度七の激震に揺さぶられた斜面には無数の地割れが走り、地盤は著しく緩んでいる。防災の専門家が鳴らす警鐘は重い。普段ならば耐えうる程度の雨量であっても、大規模ながけ崩れや土石流、地すべりが容易に引き起こされる危険性を孕(はら)んでいるからだ。
傷跡は山野にとどまらない。損傷した堤防や排水設備は河川の氾濫リスクを高め、屋根を覆う青いシートや散乱する災害ごみは、突風に煽(あお)られれば新たな凶器へと姿を変えかねない。全壊した我が家の軒先で「もう今はやめて」と祈るように片付けを進める被災者の言葉には、度重なる苦難に対する悲痛な切実さが宿る。
過酷な現実を前に、私たちにできるのは「かつてない警戒」と「早めの備え」に尽きる。雨風が強まってからの屋外作業は厳禁だ。ブルーシートや飛散物の補強など、動けるうちに手を打たねばならない。自然の猛威を止める術(すべ)は持たぬが、人間の知恵と早めの避難で被害を最小限に食い止めることはできるはずだ。
地震から台風へ。度重なる試練に晒される熊本の地に、これ以上の災禍が重ならぬことを願わずにはいられない。雨が降り出す前に、一人ひとりが自らの身を守る行動を起こすときである。

