地震の記憶を次世代に伝える方策を高校生が考えるプロジェクト「一歩」の発表会が18日、熊本城ホールで開かれる
大地の激しい揺れから今年で10年。時間の経過とともに、あの記憶や教訓が少しずつ風化していくのは自然の理かもしれない。しかし、それを抗い、語り継ごうとする若い息吹が熊本の地で力強く芽吹いている。
高校生たちが震災の記憶を未来へ紡ぐプロジェクト「一歩」の発表会が、熊本城ホールで開催された。県内外から集まった12名の高校生は、南阿蘇村の震災ミュージアムや、阪神・淡路大震災の被災地である神戸などを巡り、自らの目で「災害の爪痕」を確かめてきた。彼らが導き出したのは、展示を見るだけでなく、自ら考え、語り合うことの大切さだったという。
発表会で目を引いたのは、カードゲーム「クロスロード」を用いた取り組みだ。「避難所で夜遅くまで話す人に注意するか」「連絡の取れない親を被災地で待ち続けるか」。高校生たちが実体験を基に考案した問いには、唯一の「正解」が存在しない。提示される「イエス」か「ノー」かの不条理な選択を通じて、参加者は互いの価値観をぶつけ合い、被災時の現実的な葛藤を追体験する。
当時、県外で過ごし参加に不安を抱いていたという高校生も、対話を重ねる中で防災意識を高めたという。震災を直接体験していない世代が増えていく中で、風化を防ぐ鍵は「体験の有無」そのものではなく、「自分の問題として想像し、語り合う姿勢」にあるのだろう。自ら考え抜いたゲーム教材が今後、地元の小中学校に配られるのも頼もしい。
災害の記憶を過去の記録として棚に上げるのではなく、次世代が主体的につむぎ直す。高校生たちが踏み出したこの小さな「一歩」は、未来の命を守る確かな足跡となって、次の時代へと続いていくはずだ。

