熊本市が発送した成人用肺炎球菌の予防接種案内の圧着はがきで一部、圧着面がはがれる
「はがきが破れる。それも、中身を秘匿するはずの圧着面が、届く前にめくれてしまうのだから世話はない」。そんな苦笑いとともに、市民の元へ届いた一枚の案内状が話題となっている。
熊本市が発送した成人用肺炎球菌の予防接種案内でのことだ。十月初旬に投函された約二千通のうち、郵便局の指摘で発送が取りやめられ、千通近くが回収された。だが時既に遅く、市民の元にはがれた状態で届いた例が数件発生。そこに印字された予防接種番号が、公の目に触れる格好となってしまった。
市側の説明によれば、この番号単体から直ちに個人の特定へ繋がる恐れはないという。しかし問題の本質はそこではない。「隠すべきものが隠れていなかった」という無神経さと、その裏にあるお粗末な手落ちである。原因を探れば、あきれたことに「品質保証期間を過ぎた用紙の使用」があったという。
紙にも「賞味期限」がある。圧着はがきの特殊なニスや接着剤は、年月が経てば劣化し、接着力を失う。そんな基本中の基本を失念し、期限切れの紙に大切な個人情報を乗せて送っていたとは、役所の危機管理意識を疑わざるを得ない。予算節約の意図があったのか、あるいは単なる確認不足か。いずれにせよ、市民の信頼を「はがす」結果となったのは皮肉な話だ。
行政が送る一通の便りは、単なる連絡文書ではない。そこには市民の個人情報が刻まれ、公的機関としての誠実さが試されている。たかが「はがき一枚」と侮るなかれ。接着面を支える粘着力の欠如は、そのまま行政に対する信頼の脆さへと直結しているのだから。
今回の不始末を単なる笑い話で終わらせてはならない。古くなった紙を使い回して信頼を損ねるようでは本末転倒だ。行政には今一度、情報保護の基本に立ち返り、市民との絆を力強く「圧着」し直す姿勢が求められている。

