長射程ミサイル「25式地対艦誘導弾」発射手順を確認 日米演習に健軍(熊本市)から初展開

秋深まる長崎と佐賀の県境、大野原演習場に、すすきを揺らす風が吹き抜ける。日米共同統合演習「キーン・ソード」のさなか、報道陣に公開されたのは、緑豊かな草原でミサイル発射筒が斜め上を仰ぐ緊迫の一瞬であった。

実弾は装填されていない。だが、車体から降り立った隊員たちが小銃を構え、手際よく発射態勢を整える姿には、どこか冷ややかな現実味が漂う。展開したのは熊本・健軍駐屯地の第5地対艦ミサイル連隊。今年3月に配備されたばかりの「25式地対艦誘導弾」である。駐屯地の柵を飛び出し、実際の演習場へ外撃(そとが)けに出たのはこれが初めてという。

相手の領域内にある基地などを直接叩く「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の一角を担う長射程ミサイルである。自衛隊はこれまで、専守防衛の理念のもとで盾の役割に徹してきた。だが、周囲の安全保障環境が急変したとして、自ら矛を手に取る道を選びつつある。健軍の訓練場で黙々と繰り返されてきた操作訓練が、ついに実動演習という現実の舞台へと踏み出した格好だ。

今回の演習には全国で自衛隊約4万5千人、米軍約1万2千人が参加する。陸海空のみならず、サイバーや宇宙空間まで見据えた日米の「一体化」は深化の一途をたどる。大野原の現場に米軍の姿はなかったとされるが、目に見えない通信の網を通じて標的の情報収集などで米軍と連携を図る計画という。

抑止力を高めることが平和を守る近道だ、という言説は久しい。しかし、長射程ミサイルという矛の先が鋭さを増せば増すほど、対立する側もまた矛を研ぎ澄ます悪循環を招きはしないか。秋草のそよぐ演習場に佇む無機質な車両を見つめながら、私たちが踏み出しつつある新たな領域の重みと、専守防衛という誓いのありようを、静かに問い直さずにはいられない。

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