熊本豪雨から6年 くま川鉄道9月の全線再開に向け試運転始まる

朝霧の立ち込める球磨盆地に、あの懐かしい鉄路の響きが帰ってきた。人吉温泉駅からゆっくりと滑り出した列車が、新しく架け直された球磨川第四橋梁を慎重に渡っていく。人吉・球磨地方を襲った激甚災害から、この七月で六年。時を止められていたわずか六キロの不通区間に、再び命が吹き込まれた瞬間である。試運転の姿に「感無量」と目を細める地元の言葉に、これまでの年月の重みが滲む。

二〇二〇年七月の熊本豪雨は、一瞬にして地域の日常を奪い去った。暴れ川となった球磨川は美しい景観を一変させ、人々の暮らしの足である「くま鉄」の線路や歴史ある鉄橋を無残に押し流した。それからの日々は、まさに視界を遮る濃霧の中を歩むような、気の遠くなる試練の連続であったに違いない。窓外から鉄道の音色が消えた六年間、住民が抱いた喪失感はどれほどのものであったか。

しかし、鉄路の寸断は地域の絆までを断ち切ることはなかった。通勤通学の足を支え続けた代替バスの運行や、復旧を願い続けた沿線の熱意が、このほど九月二十日の全線運行再開という具体的な希望へと結実した。豪雨という天災の爪痕に立ち向かい、復興という名のレールを一本ずつ敷き直してきたのは、他でもない地域の人々の不屈の意志である。

新調された第四橋梁は、単なる移動の手段を超えた「地域の再生」の象徴にほかならない。車窓から望む球磨川の景色は、過去の災禍を記憶しつつも、未来へと進む新たな希望を乗せて輝くはずだ。災い転じて福となす。六年という歳月は長かったが、失われた鉄路を取り戻した人吉・球磨の地は、前よりも力強い絆で結ばれている。青く澄んだ球磨川の奔流とともに、新生くま川鉄道が再び地域を元気に走る、その「本番」の秋が待ち遠しい。

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