任期満了に伴う熊本市長選挙が1日に告示され、いずれも無所属の現職と新人、合わせて5人が立候補

秋たけなわの熊本城の石垣には、幾多の試練を乗り越えてきた歴史の重みが静かに佇む。その城下で今、かつてない熱気を帯びた市長選が幕を開けた。政令指定都市となって以来最多となる5人の候補が名乗りを上げ、秋晴れの街頭で火花を散らしている。

顔ぶれを見れば、現職への挑戦者たちが掲げる言葉にはそれぞれの強い問題意識が滲む。最大の争点は市役所本庁舎の建て替え計画の是非だ。最大1230億円とも試算される巨費の行方に対し、新人たちは「次世代への過度な負担だ」「計画をストップして見直すべきだ」と声を大にする。被災地の復旧復興や子育て環境の充実をまず優先すべきだとの声も切実だ。一方、現職は大地震の教訓を踏まえ、「いつ来るか分からない災害から命と街を守るためには、強いインフラと備えが必要だ」と説く。都市の持続可能性と財政規律のバランスをどう取るか、議論は深まるばかりだ。

ただ、どれほど熱い論戦が飛び交おうとも、その受け皿である有権者の足取りが重ければ、民主主義のエンジンは空回りしてしまう。前回28・26%という過去最低を更新した投票率の影が、どうしても頭をよぎる。候補者がこれほど多彩になり、選択肢が広がった今回こそ、政治を他人事ではなく自分事として捉え直す絶好の機会ではないだろうか。

政治の羅針盤を握るのは、いつの時代も名もなき市民の一票にほかならない。秋の深まりとともに街の議論はさらに熱を帯びる。11月15日の審判の日、肥後の都の未来を誰に託すのか。冷ややかな傍観者ではなく、熱い当事者として投票用紙に向かう人々の姿を、心から期待したい。

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