陸上自衛隊健軍駐屯地に配備された長射程ミサイルに反対する市民グループが提出した公開質問状に、熊本市の大西市長が回答

行政の回答は、時に「語らないこと」で多くを雄弁に物語る。陸上自衛隊健軍駐屯地への長射程ミサイル配備を巡り、地元の市民グループが突きつけた公開質問状。そこへ寄せられた熊本市・大西市長の書面回答を読みながら、ふと虚空を掴むような思いにとらわれた。

質問状が正した11項目は、決して机上の空論ではない。万が一、駐屯地が他国からの武力攻撃に晒されたとき、周辺住民はどこへ、どう逃げればよいのか。シェルターの整備状況はどうなっているのか。生活の地平に直結する、あまりにも生々しく現実的な危機管理の問いである。

これに対し市長が提示したのは、「国民保護法や現行制度に基づく」「国や県と連携し、避難誘導に努める」という、いわば絵に描いたような優等生的な文言であった。「住民の安全確保を最優先に」という言葉に偽りはないのだろう。しかし、有事の混乱という極限状態において、その「原則」が具体的にどう住民の命を繋ぐのかという肉付けは、すっぽりと抜け落ちている。市民グループが「具体的な計画が織り込まれていない」と不満を募らせるのも無理はない。

国策として防衛力の強化が進み、前線の防壁としての現実味を帯びる地方都市。一方で、そこに暮らす人々の日々の営みや不安は、法論理や制度の枠組みの中に整然と押し込められていく。行政が「制度に従う」と繰り返すだけの防波堤となってしまっては、住民の真の安心はどこにも居場所を失ってしまう。

政治や行政の第一義は、抽象的な法令の墨守ではなく、生身の市民の命を守る具体策を示すことのはずだ。答えをあらかじめ用意できない問いであるからこそ、対話を重ねる姿勢が求められる。形だけの「回答」で幕を引くのではなく、膝を突き合わせた説明の場を設けること。それこそが、揺れる街の懐に寄り添うリーダーの真の言葉ではないか。

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