熊本市市庁舎の建て替えによる支出の増加について、市民への影響や返済計画を公表するよう、NPO法人が市に申し入れ

朝の澄んだ空気のなか、白川のせせらぎに耳を澄ませば、街の息吹が聞こえてくる。熊本市の中心に聳(そび)える市庁舎は、半世紀以上の時を重ねて街の喜怒哀楽を見守ってきた。だが、巨大なコンクリートの箱も寄る年波には勝てず、建て替えの議論が加速している。その総事業費、実に最大で1230億円という。

この果てしない数字に、待ったをかけた人々がいる。先日、市民団体が市に対して要請文を提出した。公表されている利息などを元に弾き出した試算では、今後約20年間にわたり、毎年30億円もの返済が重くのしかかるという。彼らが問うのは単なる数字の帳尻ではない。「この莫大な借金は、日々の福祉や教育、市民サービスの縮小というかたちで跳ね返ってくるのではないか」という至極当たり前の危惧である。

庁舎はまちづくりの拠点であり、防災の要でもある。安全な建物に整えること自体を頭から否定する者はいないだろう。しかし、それが未来の市民の暮らしを圧迫するほどの城であってはならない。家を建てるのに、身の丈に合わぬローンを組み、日々の食費や子供の習い事代を削るような本末転倒が許されないのは、行政の台所事情とて同じはずだ。

政治とは、限られた資源をいかに配分するかという「選択」の連続である。もし豪華な新庁舎と引き換えに、公共施設の閉鎖や行政サービスの縮小が忍び寄るのだとすれば、その痛みを被るのは他ならぬ市民だ。ツケを払わされる側に、納得のいく説明と詳細な返済計画が提示されるのは当然の権利である。

市が示される回答期限は間近に迫る。未来の熊本を背負う子供たちに、立派な庁舎と重い借金のどちらを遺(のこ)したいのか。今こそ、誠実で透明な対話が求められている。

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