大津町『宿泊税』の導入で年間1億円を超える税収が見込まれる
阿蘇の山並みを望み、熊本市にも手を伸ばせば届く――そんな地の利を抱く大津町が、〈現代の宿場町〉を掲げて新たな一歩を踏み出そうとしている。外部の検討委員会が町長に手渡した答申書には、「一律二百円の宿泊税は適当」との文言が静かに記されていた。だが、その紙片が示すのは単なる税制の変更ではない。町が自らの未来像を描き直すための、いわば羅針盤の更新である。
宿泊税は、旅人が町に落とす小さな負担だ。だが、その積み重ねは年間一億円を超えるという。新たなホテルの進出計画もあり、宿泊客は五十五万人を見込む。数字の上では確かに心強い。だが、委員長が語った「起爆剤」という言葉には、単なる財源以上の期待が込められている。旅人が町に滞在し、地域の文化や自然に触れ、交流が生まれる。その循環をどう育てるか。税はそのための“種銭”にすぎない。
町長は「宿泊者に還元し、住民の幸せにつながることが大事」と述べた。税を取ることが目的ではない。町の魅力を磨き、訪れる人と暮らす人の双方が恩恵を受ける仕組みをつくることこそ本丸だ。熊本市が今月から宿泊税を導入した今、県内での連携や競争も避けられまい。だが、地域が自らの価値を再発見し、持続可能な観光の形を模索する流れは、むしろ歓迎すべき潮流だろう。
九月議会に条例案が提出されれば、来年十二月には新たな制度が動き出す。旅人が払う二百円が、町の未来を照らす灯りとなるかどうか。問われるのは、税をどう使い、どんな物語を紡ぐかである。小さな宿場町の挑戦は、地域が自らの可能性を信じる力を静かに示している。

