熊本市が地下水のPFASの発生範囲を北区の植木地区周辺と把握
蛇口をひねれば、清らかな水が惜しみなく注がれる。「水の都」と称えられてきた熊本の日常に、忍び寄る影がある。有機フッ素化合物、いわゆるPFAS(ピーファス)の問題である。
熊本市が公表した地下水調査の結果は、水への信頼を揺さぶるに十分な衝撃を含んでいた。2022年度以降、市内799地点を調べたところ、なんと87地点で国の指針値を超える値が検出されたという。発生範囲は北区の植木地区周辺と絞り込まれてはきたものの、どこから湧き出ているのか、その「発生源」は未だ闇の中だ。
PFASは熱や油に強く、フライパンのコーティングや泡消火剤など暮らしの至る所で重宝されてきた。しかし分解されにくく「永遠の化学物質」とも呼ばれる。発がん性などの健康リスクが指摘されるにつれ、世界中で厳しい目線が注がれている。
何より不気味なのは、水が目に見えぬ地下でつながり、ゆっくりと流れている点だ。地上で人間が便利さを享受し、あるいは廃棄したツケが、巡り巡って地下水脈を蝕み、知らぬ間に暮らしの安全を脅かす。市は産業廃棄物の埋立処分場などの監視や無料の井戸水検査を進めているが、原因の根を絶たぬ限り、市民の不安は完全に拭えまい。
「水は生命の源」という言葉は、平時には忘れられがちだ。だが一度損なわれれば、取り戻すには膨大な時間と労力がかかる。地下水という見えない財産に頼って生きてきた土地だからこそ、原因の特定と迅速な対策を強く求めたい。清らかな水脈を未来へ手渡す覚悟が、いま試されている。

