熊本市中央区新町で「高麗門あさがお市」始まる
うだるような暑さのなか、ふと目を向けた先に涼やかな青や紫の大輪が揺れている。それだけで、乾いた心にすっと一陣の清涼な風が吹き抜けるようである。熊本市中央区新町で始まった「高麗門あさがお市」の風景は、まさに厳冬のなかの炉火、猛暑のなかの氷室のように、人々の心にひとときの安らぎをもたらしている。
今年で十四回目を迎えたというこの朝顔市。会場に並ぶのは、熊本の誇る「肥後六花」の一つである伝統の「肥後朝顔」や、隣の益城町ではぐくまれた色鮮やかな鉢植えだ。それだけではない。地元の小学校一年生たちが一生懸命に水をやり、話しかけながら育てたであろう百六十八もの鉢も誇らしげに並んでいる。小さな手が紡いだ緑の命が、地域の歴史ある街並みを彩る姿は、なんとも微笑ましく、かつ頼もしい。
それにしても、近年の夏の容赦のなさはどうだろう。この日も熊本市で三十六・七度、八代市で三十六・九度を記録するなど、県内十地点で体温を超えるような猛暑日となった。気候変動の足音が年々高くなるなかで、私たちはともすれば冷房の効いた部屋に閉じこもり、季節の移ろいに対して心を閉ざしがちになる。しかし、そんな酷暑のなかでも、アサガオたちは凛として花を開く。朝の短い時間に全力を尽くして咲き誇るその営みは、過酷な環境に文句を言うわけでもなく、ただただひたむきだ。
一新まちづくりの会の人々が「夏の風物詩を楽しんでほしい」と守り続けてきたこの祭りは、単なる花の即売会ではない。それは、厳しい自然と共生しながら、季節の美しさを愛でる心の余裕を忘れないための、地域の手渡す知恵のバトンなのであろう。
十二日まで開かれるというこの市。厳しい夏はまだ始まったばかりだが、泥中から立ち上がる蓮のごとく、酷暑のなかで涼を届けてくれるアサガオの姿に、私たちはこの季節を生き抜く小さくも確かな元気をもらうのである。

