世田谷区が民泊営業緩和案、住居専用地域で年180日

「閑静な住宅街」を誇りにしてきた街が、大きな舵(かじ)を切ろうとしている。世田谷区が、住居専用地域での民泊営業を平日にも認め、上限の年間180日まで緩和する条例改正の素案をまとめた。騒音やゴミ問題を懸念する区民から見れば、「静かに暮らしたい」という切実な願いへの逆風に映るだろう。

近隣の区では逆に規制を強める動きが目立つ。新宿区は学校周辺などの営業を原則禁止する方針を固め、21の特別区長も国へ規制強化を要望した。その流れに抗するように、世田谷区の保坂展人区長は慎重な姿勢を崩さない。

保坂氏の言分(言い分)にも一理はある。ルールを厳格に守る良質な事業者まで一律に排除すれば、観光や多文化共生の選択肢を狭めることになりかねない。単に締め出すのではなく、適正な運営を見極めて育てる――。そんな都市の包容力を模索する構想なのだろう。

だが、理想と現場の溝は浅くない。見知らぬ旅行者が夜間に訪れ、生活リズムが乱される恐怖は、住む者にしか分からぬ切実さがある。どれほど「適正な事業者」を見極めると言っても、近隣住民にとっては目の前の騒音こそが現実だ。行政の監視の目が細部まで届くのか、実効性への不安は拭えない。

多様性を受け入れる開かれた街を目指すのか、それとも住環境の平穏を最優先に守るのか。便利さと安全の均衡(バランス)をどこに取るかという課題は、世田谷一区にとどまらない。観光立国を掲げる現代日本が、あちこちの足元で突きつけられている難問そのものである。

秋風が吹き抜ける住宅街で、パブリックコメントの募集が始まる。住人の声にどこまで耳を傾け、納得のいく解を導き出せるか。議論の行方は、全国の都市のあり方を占う試金石となる。

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