生活再建に向けた手続きのすべての起点となる市町村の交付する「り災証明書」について
豪雨の猛威や突如揺れ動く大地は、容赦なく平穏な日常を奪い去る。濁流が押し寄せ、瓦礫が散乱する惨状を前にしたとき、人はただ茫然自失とし、一刻も早く片付けを始めたい衝動に駆られるものだ。しかし、泥をかき出すその手、道具を握るその手を、どうか少しだけ止めてほしい。片付けの先動よりも優先すべき一筆の「記録」がある。スマートフォンをかざし、惨禍の痕跡を写真に収めることだ。
被災者が再び立ち上がるための道筋において、行政の支援は不可欠な命綱となる。被災者生活再建支援法に基づき支給される支援金や、各種の融資、保険金の請求など、生活再建に向けた手続きのすべての起点となるのが市町村の交付する「り災証明書」である。そして、その判定の客観的根拠となるものこそ、被害の現実を証言する写真なのだ。
単に荒れ果てた光景を収めればよいわけではない。建物の四方からの全景、メジャーをあてがって浸水の深さを明確にした遠近の対、そして外壁や基礎、内壁から水回りに至る細部の被害。広角と接写を組み合わせた丹念な記録が、後に市町村の担当者が行う調査の確固たる裏付けとなる。一枚の画像が、損害の程度を正しく伝え、届くべき支援へと繋ぐ言葉なき証明書となるのである。
参考サイト:千葉県・大規模な浸水被害 片付け前に「り災証明書」申請のための写真撮影を
国による生活再建支援制度は、住宅の全壊や解体、半壊の度合いに応じて基礎支援金や再建方法に応じた加算支援金を支給する。さらに自治体独自の支援や保険金請求においても、この記録の重みは変わらない。絶望の最中にあって、カメラのレンズを惨状に向けることは決して容易ではないだろう。だが、混乱の渦中で残された一枚一枚の影画は、失われた暮らしを未来へと引き戻すための、小さくとも力強い架け橋となるはずだ。

