陸上自衛隊健軍駐屯地で3日、配備されている長射程ミサイル「25式地対艦誘導弾」の住民向けの展示会が初めて行われる

春の空に伸びる飛行機雲を見て、その先に何があるのかと思うことがある。遠くへ続く一本の白線は、希望への道にも見えれば、不安へ向かう境界線にも見える。熊本市東区の陸上自衛隊健軍駐屯地で公開された長射程ミサイル「25式地対艦誘導弾」もまた、人々に異なる風景を映し出したようだ。

今年3月末に配備されたこのミサイルは、約1000キロ先を射程に収めるとされる。かつて専守防衛を国是としてきた日本が、「反撃能力」という新たな防衛の考え方を具体化する象徴でもある。展示会を訪れた住民の中には、実物を見ることで安心感を得た人がいた。一方で、台湾有事への危機感を口にする人もいた。抑止力への期待と、緊張の高まりへの懸念。その両方が同じ会場に存在していた。

考えてみれば、防衛装備とは不思議な存在である。強ければ強いほど安心できると言われる半面、強くなればなるほど相手の警戒も招く。盾は身を守る道具だが、大きな盾は時に戦いを予感させる。安全保障とは、安心と不安が表裏一体となる世界なのだろう。

今回の展示会では、住民から「何発配備されているのか」「熊本が攻撃対象になるのではないか」といった疑問も出たという。しかし、防衛上答えられないことがあるのも事実だ。だからこそ行政には、説明できない部分を隠すのではなく、説明できる範囲を最大限尽くす姿勢が求められる。情報の空白は、人々の想像を膨らませ、ときに不信へとつながるからだ。

平和は軍備だけで守られるものでもなければ、対話だけで守られるものでもない。その両方を支えるのは、市民が現実を知り、自ら考える機会である。今回の展示会は、賛否を超えて、その入り口になった点に意味があろう。

遠くまで届くミサイルの時代だからこそ、もっと近くまで届く言葉が必要だ。防衛政策と住民との距離を縮める努力なくして、本当の安心は生まれない。熊本で交わされた小さな問いかけは、日本の安全保障が向き合うべき大きな課題を映している。

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