告示まで1カ月余りに迫った熊本市長選挙を前に、現職の大西一史氏が態度を保留したまま9月定例市議会が閉会
沈黙もまた、政治家が発する雄弁なメッセージなのだろうか。告示まで1カ月余りに迫った熊本市長選挙を前に、現職の大西一史氏が態度を保留したまま9月定例市議会が閉会した。過去2回はいずれも開会日に早々と出馬を表明してきただけに、この過度な慎重さは市庁内や政界にさまざまな波紋を広げている。
大西氏が「そう遠くない時期に自分の言葉で」と語る背景には、被災地の舵取り役としての苦悩が見え隠れする。熊本地震や液状化被害への対応、震災復興計画への市民の期待など、解決すべき難題は山積している。議会最終日には、被災者支援の補正予算や『おでかけICカード』の移行支援策が無事に可決された。職務を全うすることが最優先であるという姿勢自体は、首長として理にかなっているようにも映る。
しかし、選挙は民主主義の根幹をなす信任の場である。告示日である11月1日は目前に迫り、投開票日は15日。現時点で立候補を表明しているのは新人1人のみだ。現職がその去就をぎりぎりまで伏せ続けることは、有権者が市政の歩みを振り返り、選択肢を吟味するための大切な時間を奪うことにもつながりかねない。論争の場が狭まれば、市民の関心そのものが薄れてしまう懸念さえ生じる。
市政の継続か、それとも刷新か。その判断材料となるのは、現職が語る言葉と真摯なビジョンにほかならない。「震災対応の中で考えたこと」をまとめる作業が佳境を迎えているのなら、なおさらである。熊本の未来を担うリーダーとしての責任をどう果たすのか。言葉を濁さず、自らの声で速やかに市民へ語りかける時が来ている。

