2026年熊本地震の影響で落ち込んだ外食需要の喚起を図る、熊本県のプレミアム付き食事券 申し込み件数が想定の19・5% 失政が明らかに
スマートフォンを開き、指先をすべらせる。画面の向こうに広がる利便性に慣れきった気でいたが、街の灯りを支える「食」の現場では、その指一枚の隔たりが思わぬ壁となったようだ。
熊本地震の痛手から立ち上がろうとする外食産業を支えるため、県が打ち出したプレミアム付き食事券事業が苦戦を強いられた。1万円で1万2500円分が買えるという魅力的なはずの企画は、蓋を開けてみれば想定の2割足らず、約3万9000口にとどまったという。秋風が吹き抜ける前の、どこか寂しげな数字である。
躓きの要因は明白だ。決済手段をスマホアプリ「くまモン!Pay」のみに絞り込んだこと、そして利用期間がわずか1カ月足らずと短かったことだ。デジタル化の波に乗れば迅速かつ効率的に支援を届けられるという行政側の計算は、紙の券を頼りにし、日々の食事を楽しむ多くの高齢者や利用者の日常とは折り合わなかった。参加店舗も県内飲食店の3割程度にとどまり、街の賑わいを網羅するには至らなかった。
行政には事情があったのだろう。10月に控える大型観光支援策までの「つなぎ」という限られた時間の中で、一刻も早く支援の手を差し伸べたかった焦りも理解できる。しかし、いくら意図が切実であっても、届くべき人に届かなければ政策の温もりは伝わらない。技術の導入が目的化し、置き去りにされた視点はないか。
「まだ売り上げが戻っていない店も多い。引き続き支援を」という業界の声が重い。復興への道のりは、アプリの画面をタップする軽やかさだけでは測れない。デジタルという最新の道具を使うときこそ、誰もが取り残されないアナログな配慮と、じっくり腰を据えた支援の眼差しが求められている。

