大阪市、民泊などの宿泊施設に騒音対策や従業員の常駐を求める独自規制を設けると明らかに

旅の宿に何を求めるか。静けさと安心、そして少しの非日常だろうか。しかし、その「非日常」を消費する者と、「日常」を淡々と生きる者が背中合わせで暮らすとなれば、軋みが生じるのは世の理である。

大阪市が民泊などの宿泊施設に対し、独自規制を強める方針を示した。建物の構造に制約を設け、滞在中の従業員常駐を求めるという。背景にあるのは、住民から寄せられる絶え間ない騒音の苦情だ。市によれば、苦情の8割以上が木造や鉄骨造の建物からだった。壁一枚を隔てた向こう側で夜な夜な繰り広げられる宴に、心を削られてきた街の素顔が浮かぶ。

天下の台所、そして商人の街・大阪は、訪日客の熱気を真っ先に吸い込んで膨らんできた。全国の特区民泊の9割以上が集中したという数字は、その旺盛な包容力の証しでもあろう。だが、限界を超えた熱は時に火傷をもたらす。5月に特区民泊の新規受付が終了し、一般的な民泊への移行が見込まれるこの機に、市が手綱を締め直すのは当然の帰結と言える。

「大阪の魅力を発信しつつも、住民が不安を感じない施策を」。横山英幸市長の言葉には、観光振興と生活防衛の狭間で揺れる苦心がにじむ。観光客の落とす金は街を潤すが、住人が安眠を奪われて去ってしまっては、街の骨格そのものが揺らぎかねない。

旅人は去り、住人は残る。街の主役がどちらであるかは言うまでもない。看板を掲げる以上、事業者は「お邪魔している」という謙虚さを客に促す義務があろう。格子戸の向こうから漏れる灯りと笑い声が、街の情緒ではなく単なる騒音と化した時代である。旅の狂騒を許容しつつ、静寂という住民の当たり前の権利をどう守るか。なにわの街が挑む試練は、観光立国を焦る日本全体の縮図でもある。

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