窃盗などの容疑で熊本県職員を逮捕 未明に県庁で約70万円盗んだ疑い

公金を守るべき場所で、その手が忍び寄る。熊本県央広域本部の事務室に深夜、侵入し、収税課が管理していた現金約70万円を盗み出したとして、30歳の県職員が逮捕された。税を納める県民の信頼を足元から崩し去る、極めて無神経な暴挙と言わざるを得ない。

公務員による不祥事は後を絶たないが、税収を扱う部署での窃盗劇となれば悪質さは一しおだ。税とは本来、地域の暮らしを支え、未来を築くための共通の財産である。その集積点である職場へ闇に紛れて忍び込み、自らのポケットにねじ込む姿には、公僕としての誇りも倫理観も微塵も感じられない。

言葉を失うのは、職場の背景である。熊本は今なお、熊本地震からの復旧と復興の途上にある。全国からの心強い支援と応援の手を受けながら、職員が一丸となって歩みを進めている最中だ。復興への汗と涙が滲む現場で、その信頼を身内から泥足で踏みにじる行為がどれほど多くの努力を台無しにしたか。県幹部の「誠に申し訳ない」との陳謝も、県民の失望の深さを埋めるにはあまりに軽い。

事件の真相解明はもちろんのこと、管理体制の甘さも厳しく問われねばならない。なぜ深夜のオフィスへ容易に侵入でき、現金が持ち出されたのか。単なる「法令遵守の喚起」や「綱紀粛正」といった定型句の反省で終わらせてはならない。

税という公金を扱う重みを、いま一度胸に刻み直すべきだ。一人の軽率な欲望が奪ったのは、単なる現金70万円ではない。人々の汗の結晶である税金と、行政に対する確固たる信頼そのものなのだから。

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