木村敬知事「2026年熊本地震からの復旧・復興に努めている中で本当に申し訳なく、痛恨の極みだ」 熊本県県央広域本部総務部収税第一課の男性職員が建造物侵入と窃盗の疑いで逮捕

鍵を持つ手は、門を守る手でなければならない。しかし、その手がいとも易易と内側から錠を破り、見張り役が自ら泥棒に変じる事態が起きた。熊本県庁の収税課で起きた金庫荒らしである。逮捕された県職員の男は、借金に窮した末に自らの職務上の特権を悪用した。残された手紙を置き土産に消えた男の影に、行政の信頼はあっけなく瓦解した。

公金とは、当然ながら県民が一円一銭まで汗水流して納めた血税である。窓口で預かられた税金が、一時保管場所である新館の金庫から消え去る。解錠に必要な鍵と暗号を知る「限られた数人」の一人が犯人だったという事実は、呆れを通り越して眩暈(めまい)すら覚える。施錠という防壁は、身内の欲望の前には紙屑ほどの役にも立たなかったわけだ。

「痛恨の極みだ」。木村敬知事は報道陣の前で頭を下げた。熊本地震からの復旧・復興という大きな目標に向け、県庁一丸となって歩みを進めている最中の不祥事である。復興の現場で汗を流す多くの職員の努力に水を差し、何より県政へ寄せる人々の思いを裏切った罪は重い。

身内の不正を目にするたび、我々は「再発防止」という言い古された不調法な言葉を耳にする。今回も知事は担当部局での議論を口にしたが、パスワードの管理やチェック体制といった技術論をこねくり回すだけでは、一度失われた信頼は戻らない。問われているのはシステムの問題以上に、公金を扱うという倫理観の底抜けである。

「税を収める」と書く課で起こった「税を盗む」醜聞。民から託された鍵を、自らの私欲を充たす道具に成り下がらせた男の罪咎は深い。金庫の鍵をすげ替えるのは容易いが、県民の心についた疑念の鍵穴を塞ぐのには、はるかに長い年月を要するだろう。

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