熊本城来場者が「例年の半分」 観光にも深刻な影響

石垣が崩れ落ちはてた熊本城の前に立つと、言葉を失う。週末というのに人の姿はまばらで、かつての賑わいが嘘のようだ。先月の地震以来、閉ざされていた見学ルートが先月中旬に再開されたものの、訪れる客の足取りは鈍い。例年の半分ほどという数字が、被災地の今を静かに物語っている。

「隣の大分から来るだけでも、少しは力になれるのかな」。そう語る旅行者の言葉に、ハッとさせられる。地震という自然の猛威は、一瞬にして平和な日常を奪い去り、人々の心に深い傷痕を残した。しかし、それ以上に今、この地を苦しめているのは、過剰な自粛が生み出す「風評」という名の無形の大波ではないか。

県内では被災していない地域の宿までキャンセルが相次ぎ、経済的な損害は20億円に達するという。熊本城の痛々しい姿ばかりが報道されるあまり、県全体が傷つき、訪れてはならない場所であるかのような錯覚が広まってしまった。だが、高知から訪れた観光客が「阿蘇も市内も大丈夫だった。来てよかった」と笑顔を見せたように、息を吹き返し、変わらぬ温かさで人々を迎え入れようとしている場所は確実に存在する。

旅とは、単なる気晴らしにあらず。誰かの日常を訪ね、その土地の光と影を共に感じ取る営みである。旅人が落とすコインと足音が、復興への小さな灯火となり、傷ついた街を力強く照らす。

崩れた石垣は、加藤清正が築いた不屈の城が耐え抜いた証しでもある。痛みを抱えながらも立ち上がろうとする熊本の風を、今こそ現地で感じたい。「被災地を助ける」などと肩肘を張る必要はない。ただ訪れ、景色を愛で、美味しいものを食べる。その当たり前の行動こそが、何よりの支援となるのだから。旅人の一歩が、熊本の明日を紡いでいく。

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