木原官房長官、旅行にかかる費用の一部を公費で補助する「九州応援割」などの観光支援策を打ち出す姿勢
観光の街に漂う哀愁は、数字の並び以上に痛切だ。熊本を訪れた木原官房長官が「九州応援割」などの観光支援策を打ち出す姿勢を示した。しかし、現場から聞こえてくるのは感謝の言葉ばかりではない。制度の開始を待つがゆえに目の前の予約がキャンセルされるという、皮肉な逆転現象が起きている。
政策とは本来、傷ついた地に差し伸べられる温かな手であるべきだ。だが、その手が「いつ届くか分からぬ」となれば、人は身をすくめて待つしかない。「後で安くなるのなら」と旅を先延ばしにする消費者の心理は責められまい。害をなしているのは、吉報を予告しながら具体像を出し惜しみする行政のスピード感のなさだ。
地元の議員からは「前倒しで支援しなければ、観光地はもたない」との切実な叫びが上がる。宿の灯りを守り、土産物屋の暖簾を維持するのは、遠い未来の予算ではなく今日の客である。制度の設計図をじっくり捏ねくり回している間に、肝心の受け皿が倒れてしまっては元も子もない。
絵に描いた餅で腹は膨らまぬ。必要なのは完璧な制度設計より、機を逃さぬ果断さだ。風評や自粛に耐える被災地の時間軸と、永田町の時間軸とのズレを、一刻も早く埋めねばならない。速やかで柔軟な手当てこそが、今求められる真の「応援」である。

