2026年熊本地震で発生した災害廃棄物、推計値で約60万~100万トン
瓦礫(がれき)の山を前にするとき、人はただ途方に暮れる。かつてそこにあった暮らしや思い出が、一瞬にして名もなき「廃棄物」と化してしまうからだ。熊本県が発表した新たな推計によると、先日の地震で生じた災害廃棄物は最大100万トン。あの日、熊本を打ちのめした2016年の地震の3分の1以下とはいえ、20年の豪雨災害を遥かに凌駕する膨大な量である。
「公費解体が進むと、廃棄物の量が多くなる」。木村敬知事の言葉は、復興の歩みが本格化することの裏返しでもある。倒壊した家屋や崩れ落ちた瓦を撤去し、更地に戻す作業は、被災者が前を向くための不可欠な第一歩だ。しかし、その過程で生じる大量の「街の破片」をどう捌くか。県は処理終了の目標を来年12月と掲げた。
災害廃棄物の処理は、単なるゴミの片付けではない。限られた仮置き場、混雑する処理ルート、そして安全面への配慮。市町村だけにその重荷を背負わせれば、現場は早々に立ち行かなくなる。県が市町村への技術支援や負担軽減を盛り込んだ基本方針を示し、環境省も専門職員の派遣など手厚い人的・財政支援を打ち出したのは、過去の教訓を活かした当然の責務と言えよう。
だが、数字や計画の向こう側にあるのは、人々の傷ついた心だ。分別され、ダンプカーで運ばれていく柱の一本、瓦の一枚にも、住まい手の生きてきた時間が宿っている。迅速な処理とリサイクルの推進は絶対の使命だが、同時にそれらを丁寧に扱う温かな視線も忘れてはならない。
廃棄物が消え去った跡地に、再び人々の営みが戻るその日まで。行政の手厚い伴走と、地域が一体となった粘り強い歩みが今、試されている。
