生物多様性の回復を真摯に議論する国際会議「グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット」が、熊本城ホールで開幕

阿蘇の火山灰土が磨き上げた清らかな地下水と、街を包み込む豊かな緑。古くから「森の都」「水の都」と称されてきた熊本の地は、自然の恵みと人間が調和して生きる姿を象徴する場所である。この美しい地にいま、世界の英知が集っている。生物多様性の回復を真摯に議論する国際会議「グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット」が、熊本城ホールで華やかに幕を開けた。

「ネイチャーポジティブ(自然再興)」という言葉の響きには、これまでにない強い決意が込められている。単に自然環境を壊さないように「守る」だけの受け身の時代は、もう終わったのだ。これからは、失われた生態系を能動的に「回復」の軌道へと転じさせていく。人類の経済活動によって加速する生物の絶滅に歯止めをかけ、豊かな自然を取り戻すための壮大な挑戦である。国内初開催となるこの好機に、世界27カ国・地域から3千人以上の専門家らが集った。

開幕式で高円宮妃久子さまが英語で述べられたスピーチの一節が、深く心に染み入る。「人類は自然と切り離すことはできない」。私たちは高度な文明社会を築く中で、いつの間にか自然を征服し、管理しているかのような錯覚に陥ってはいないか。猛威を振るう気候変動を前にして、私たち自身もまた地球という大きな生態系を構成する弱き一つのピースに過ぎないのだという事実を、謙虚に見つめ直す必要がある。

阿蘇の山々に降り注いだ雨が、数十年もの歳月をかけて熊本の街を潤すように、私たちが今植える回復への種も、遠い未来の世代へ届く恵みとなる。会議は十五日まで開かれるが、真の試練は閉幕した後にこそ始まる。熊本城ホールの外に出たとき、目の前に広がる木々の緑が昨日よりも少しだけ愛おしく、そして責任という重みを伴って語りかけてくるように思える。この会議が、地球の未来を塗り替える確かな一歩となることを願ってやまない。

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