熊本市熱中症対策標語コンテスト・・・「のどかわく前に飲むのが夏ルール」が最優秀賞に
「のどかわく前に飲むのが夏ルール」。シンプルでありながら、この一文に現代の夏を生き抜くための知恵が凝縮されている。熊本市で開かれた熱中症対策標語コンテスト。市内から寄せられた745点もの小学生の作品から、最優秀賞に輝いた川上小学校6年、林にこなさんの言葉である。
「のどが渇いた」と感じた瞬間、体内ではすでに脱水が始まっていると言われる。体の防衛本能が警戒アラームを鳴らす前に、自ら先手を打って水分を補給する。大人でもついつい後回しにしがちな基本中の基本を、児童の真っ直ぐな言葉が軽やかに呼びかけている。スポーツに汗を流す人々への気遣いから生まれたという背景も心温まる。
それにしても、子どもたちが熱中症予防を標語にし、互いに警戒を呼びかけねばならない時代になったのだと、時の流れと環境の変化に思わず眩暈(めまい)を覚える。かつて日本の夏といえば、入道雲に蝉しぐれ、夕立の後の涼風といった風情が思い起こされたものだ。しかし今や、夏は「風情を楽しむ季節」から「命を守るために警戒する季節」へとその姿を変えてしまった。連日報じられる危険な暑さは、かつての涼やかな日本の夏を遠い昔の出来事のように感じさせる。
今回で2回目を数えたこの取り組みだが、入賞した5人の言葉は今後、熊本市役所やクーリングシェルター(指定暑熱避難施設)に掲示されるという。街のあちこちで子どもの素直な言葉に出会うことで、ふと足を止め、お茶のペットボトルに手を伸ばす大人も少なくないはずだ。小さな標語が、地域の人々の健康を守る「命の処方箋」となる。
過酷さを増す地球温暖化のなか、私たちはどう生きるか。大人が頭を抱える課題に対し、子どもたちは言葉の力で立ち向かっている。「のどかわく前に」。今年の夏はこの言葉を小さな御守りのように心に携え、水分を手に取りたい。
