熊本地震で人工呼吸器や透析など影響で患者の負担が増す事態
大地震の爪痕は、命を支える最後の砦をも容赦なく揺さぶった。最大震度7に見舞われた熊本県では、重病者や入院患者を預かる医療機関が甚大な被害を受け、断水や停電といったライフラインの遮断が今も重くのしかかっている。
宇城市の熊本南病院では、建物の壁が剥がれ落ち、天井からの水漏れに見舞われた。玄関前に敷かれたマットレスに身を寄せ合う患者たちの不安は、察するに余りある。難病を抱え、人工呼吸器に命を託す患者も少なくない中、自力での診療継続を諦め、他施設への緊急搬送を余儀なくされた。余震の恐怖と戦いながらストレッチャーを押し続けた支援医師たちの姿は、現場がいかに極限状態にあるかを物語っている。
災害時における「医療の継続」は、失われずに済むはずの命を守るための絶対条件だ。しかし現実は厳しい。県内数十もの施設で断水や停電が続き、大量の水を要する人工透析治療など、命に直結する医療行為が綱渡りの状況にある。さらに視線を転じれば、福祉施設でも職員自らが被災し、慢性的な人手不足の中でケアの質の維持に苦慮する切実な声が響く。
阪神・淡路や東日本、さらにはかつての熊本地震でも繰り返されてきた「災害関連死」の懸念が、再び現実味を帯びて目の前に立ちはだかる。避難生活の長期化や衛生環境の悪化は、静かに、しかし確実に人々の体を蝕んでいく。
こうした未曾有の事態において、自衛隊や他県の DMAT、NPO 法人らによる広域支援の果たす役割は極めて大きい。しかし、外部からの手厚い後方支援と並んで不可欠なのは、被災現場における感染症や食中毒予防といった「足元の衛生管理」を地道に徹底することだ。
途切れかけた命のバトンをどう繋ぎ止めるか。支援の手を緩めることなく、医療・福祉拠点の早期復旧と被災者一人ひとりの健康維持に全力で取り組むことが、今まさに求められている。
