2016年熊本地震、2024年能登地震でも多発した空き巣被害や不審者の訪問 熊本県警が警戒強める
大地が激しく揺れた後、人々に押し寄せるのは家財を失う恐怖だけではない。無人の自宅や避難所の隙を突く「火事場泥棒」の影に、被災者たちは夜も眠れぬ不安を抱えている。宇城市では、昼間から空き巣が土足で踏み込もうとする事案まで起きた。傷ついた心に追い打ちをかける悪行は、断じて許されるものではない。
十年前の熊本地震、そして一昨年の能登半島地震でも、災害に便乗した卑劣な窃盗が相次いだ。家を空ければ盗まれるかもしれない――そんな防犯上の懸念は、住民に避難を躊躇させ、命を守る行動の足かせにさえなる。被災者を食い物にする犯罪は、単なる財産の侵害にとどまらず、地域の安全網そのものを切断する暴挙と言えよう。
こうした事態に対し、熊本県警をはじめ全国から駆けつけた警察組織がワンチームで警戒を強化している。防犯カメラ約九百五十台の設置や二十四時間態勢の巡回は、被災者にとって心強い盾となろう。路地に照らされる赤色灯の光は、暗闇の中で孤立感を深める人々の心に、確かな安心と温もりを灯しているはずだ。
だが、防犯カメラやパトロールだけに頼るには限界もある。災害時の治安維持において真に威力を発揮するのは、警察の力と地域社会の「目」が融合したときである。近隣住民の通報で不審者が逃走した事例が示すように、声かけや相互の目配りといった「結(ゆい)」の精神こそが、犯罪を防ぐ強固な防壁となる。
悲嘆に暮れる人々の隙を狙う悪意を断ち切り、安心して避難できる環境を整えること。それは復興への第一歩にほかならない。街角を巡る車列の灯が、一刻も早く被災地に静かな日常を取り戻すともしびとなることを願ってやまない。

