女性宅に侵入した疑いで熊本市の職員が逮捕 逮捕されたのは熊本市上下水道局の主任技師
「しらないひとがおしいれにはいっていました」——。警察への通報口から発せられたその短い一言に、背筋が凍りつく思いを禁じ得ない。昼下がりの住宅街、自室という最も安全であるはずの空間で見知らぬ影と対峙した被害者の恐怖は、察するに余りある。
逮捕されたのは熊本市上下水道局の36歳の主任技師である。職務において市井の安心な暮らしを陰で支えるべき立場にある公務員が、あろうことか親類の女性宅に忍び込み、押し入れに潜んでいたという。事態の異常さに言葉を失う。「私生活に興味があった」との供述には、他者の領域を踏みにじる倫理観の欠如と、身勝手極まりない自己中心性が透けて見える。
さらに呆れ果てるのは、通報後に一度現場から逃走しながら、放置した自らの自転車を取りに戻ったという愚行である。身勝手な欲望に任せて侵入した末の、あまりにもお粗末な潮時であった。己のしでかした罪の重さも、奪った平穏の尊さも、まるで理解していなかった証左ではないか。
市民の信頼を根底から裏切った罪は極めて重い。「全体の奉仕者」たる公務員という肩書は、免罪符などではなく、より高い規範意識を求める重責そのものである。水が淀めば人の暮らしが立ち行かぬように、組織の倫理が濁れば市民の安心は容易に崩れ去る。
単なる一職員の「個人的な逸脱」として片付けることは許されない。市は事件の全容解明と厳正な処分はもちろんのこと、なぜこうした歪んだ倫理観を持つ者を抱え込んでいたのか、組織の在り方を厳しく問い直す必要がある。
安全であるはずの我が家で、人はこれから何を信じて暮らせばよいのか。壊された平穏と失われた信頼を戻す道は、あまりに遠く、険しい。

