藤崎台球場の移転再整備で、誘致を提案する予定の甲佐町を応援しようと、上益城郡などの周辺6市町の首長ら、賛同書に署名
熊本市の木々に抱かれた藤崎台球場。数々の名勝負を刻み、県民の記憶に深く根づいた「野球の聖地」が今、移転再整備という大きな転換期を迎えている。老朽化した球場の未来をどこに託すか。その誘致合戦が締め切りを前に熱を帯びる中、一筋の強い「うねり」が熊本の地に沸き起こった。
上益城郡の甲佐町が打ち出した、九州自動車道城南スマートインターチェンジ東側の田口台地への誘致案である。この動きに対し、周辺の五つの町と宇土市ががっちりとスクラムを組んだ。先の十七日、首長らが甲佐町を応援する賛同書に次々と署名を交わしたのである。単なる一自治体の「我田引水」ではなく、地域の垣根を越えた「共創」の意志が、そこにはっきりと示されていた。
思えば、近年の熊本は激動の渦中にある。半導体工場の進出に沸く県北への富の集中を横目に、県央や県南の地域が抱く「置いていかれまい」という危機感は切実だ。甲佐町の甲斐高士町長が「県央、県南地域の発展に大いに寄与する」と熱弁を振るい、周辺自治体がそれに深く共鳴したのも頷ける。新球場という巨大な磁場を呼び込むことで、人やモノの流れを南へと呼び戻したい。そんな悲願が、この一枚の賛同書には込められている。
新球場の誘致には、菊陽町や玉名市、そして現拠点を死守したい熊本市も名乗りを上げている。いずれも譲れぬ大義があり、選定の行方は容易に見通せない。しかし、子どもたちに夢を与え、世界へ羽ばたく選手を育てるという「未来への投資」の側面を忘れてはなるまい。
一自治体の枠を飛び越え、広域連携という強い「熱意」を武器に挑む甲佐町。その挑戦は、これからの地方自治が目指すべき共存共栄のあり方を、私たちに静かに問いかけている。白球が描く放物線の向こうに、熊本全体の均衡ある発展という大いなる夢を重ね合わせたい。

