2026年熊本地震で打撃を受けた全国の企業を対象に、雇用調整助成金の特例措置を導入 厚労省
地震は、家を壊すだけではない。工場を止め、店の客足を遠ざけ、会社の売り上げを細らせる。そして、その影響はやがて、そこで働く人の暮らしへと及ぶ。建物が復旧しても、仕事が戻らなければ、地域の復興は完成したとはいえまい。
厚生労働省が発表した雇用調整助成金の特例措置は、そうした「見えにくい震災被害」に手を差し伸べるものだ。売上高や生産量の減少を判断する期間を3カ月から1カ月へ短縮し、雇用量が前年より増えていても対象とする。創業から1年未満の企業にも門戸を開く。さらに熊本県内では、休業日数から時間外労働時間を差し引く規定も撤廃するという。
いずれも、平時ならば慎重に設けられている条件である。それを緩めるのは、災害時には「平時の物差し」が必ずしも現実を測れないからだろう。被災した企業にとって、売り上げが落ち込むまで3カ月待つ余裕などない。新しく事業を始めたばかりの会社には、前年との比較そのものが成り立たない場合もある。
もっとも、助成金は企業を救うためだけの制度ではない。その先には、一人ひとりの生活がある。会社が雇用を守り、働く人が仕事を失わずに済めば、所得が地域で消費され、商店やサービス業にも循環する。雇用を守ることは、地域経済を守ることでもある。
震災から時間がたつほど、被害は数字から消えていく。避難所がなくなり、道路が開通すれば、復興は進んだように見える。しかし、売り上げの減少や経営者の不安、働く人の将来への心配は、統計の陰に長く残る。
復興とは、壊れたものを元に戻すだけではない。そこで暮らす人が、明日も働き、家族を養い、地域で消費し、未来を描けるようにすることだ。今回の特例措置が、その「明日」をつなぐ橋になることを願いたい。そして国には、制度を設けるだけでなく、本当に支援を必要とする企業と働く人に届いているかを、最後まで見届ける責任がある。
